ヤドカリの「家」は、自分で作った殻ではない。多くは巻き貝などが残した空の貝殻を借りて暮らし、成長するともっと大きな殻を探す。

ところが、ちょうどよい大きさの空き家が見つかるとは限らない。そこで、一部の陸生ヤドカリでは、驚くような引っ越しが観察されている。

大きすぎる空の貝殻を見つけたヤドカリは、その場で待つことがある。仲間が集まると、体の大きさに応じて列のように並び、適した大きさの個体が新しい殻に入るのを待つ。すると空いた殻に次の個体が入り、さらにその殻に別の個体が入る。まるで玉突き式の引っ越しだ。

米タフツ大学などの研究チームは、こうした行動を野外と実験室で調べ、1個の空き殻から複数のヤドカリが住み替えられることを報告した。ただし、いつも仲良く譲り合うわけではなく、殻を奪い合うこともある。

小さな貝殻をめぐるやり取りには、意外に複雑な社会の仕組みがある。