右手と左手は鏡に映したようにそっくり。でも、ぴったり重ねることはできない。じつは分子にも、同じ原子からできているのに重ならない「右手型」「左手型」がある。「キラリティー」と呼ばれる性質だ。

違いは見た目だけではない。たとえば香りの成分「カルボン」の二つの鏡像体は、一方がミント系、もう一方がキャラウェイという香辛料に似た香りとして知られる。体の中でも、分子の向きによって結びつく相手や作用が変わることがある。

2026年のノーベル化学賞は、アンリ・カガンと硤合憲三による、分子の一方の型を優先して作る反応などの研究に贈られた。目に見えない「左右」を作り分ける技術は、医薬品などの化学合成にも重要なのだ。